1. 日本における社会保険制度の概要
日本の社会保険制度は厚生労働省の管轄であり、(A)社会保険(狭義)と(B)労働保険 から構成されています。このシステムは以下のように4つの主な制度より成り立っています。

(1) 健康保険
被保険者とその家族は、原則として実際にかかる費用の3割の負担で医療を受ける事が出来ます。また、子供が生れた時には出産育児一時金等、死亡の場合は埋葬料等の給付を受ける事が出来ます。40歳以上65歳未満の被保険者は介護保険料を負担しなくてはなりません。なお、平成20年4月1日以降75歳以上の被保険者とその家族は資格を喪失し、75歳以上の人は後期高齢者医療制度の被保険者となります。
(2) 厚生年金保険
原則として被保険者が65歳になったとき若しくは障害者となったときに給付を受ける事が出来ます。また被保険者死亡の際に遺族に対し、一時金や遺族厚生年金の給付があります。厚生年金保険に加入する会社は、児童手当法に基き児童手当拠出金を支払わなければなりません。なお、70歳に達したときには資格を喪失します。
(3) 雇用保険
被保険者が失業した場合に必要な給付を受ける事が出来ます。生活の安定と再就職の促進を目的とします。
(4) 労働者災害補償保険(以下、労災保険という)
業務上又は通勤による病気・怪我・死亡等に対して保険給付が行われます。これは会社が必ず加入しなくてはなりません。
これらの公的保険は、日本で登記されている殆ど全ての会社に対し、法律で加入を義務付けられていますので、設立の際には管轄の社会保険事務所で手続きをする事が必要です。公的保険の適用を受ける会社(適用事業所)に雇用される限り、外国人であっても国籍、在留資格、滞在期間の長短に関わらず原則被保険者になります。
2. 届出の時期
(1) 社会保険
会社は設立してから5日以内に新規加入の手続きを行うことが義務付けられています。実際には5日以内に必要書類の準備が整わない場合も多く、実務的には期限後の申請も受理されていますが、あまり遅くなると種々の支障がでてきますので、1ヶ月程度で完了できるよう準備をしたいところです。
(2) 労働保険
会社を設立し従業員を雇用した日の翌日から起算して10日以内に労災保険及び雇用保険への加入手続きが義務付けられています。実務的には期限後の申請も受理されますが、その場合も設立の日に遡って適用を受けることになります。 適用事業所の許可が下りたら、適用を受ける日から3月31日までの概算保険料を50日以内に支払います。
3.保険料の決定と支払
(1) 社会保険
毎年7月10日までに事業主は4月から6月までに各従業員に支払われた報酬を社会保険事務所に報告しなければなりません。社会保険事務所は報告に基き9月から翌年8月までの保険料を決定し事業主に通知します。
9月に決定された保険料は原則1年間適用されますが、被保険者が実際に受けている固定的な報酬の額に著しい変動が生じたときは、1年の途中であっても保険料の改定が行われることがあります。
会社は、被保険者が負担する保険料を毎月給与から控除し、事業主負担分と合せて翌月社会保険事務所へ支払うことになります。
(2) 労働保険
労働保険の保険年度は、4月1日から翌年3月31日までとなります。当年度の5月20日までに概算保険料(事業主負担分と被保険者負担分の合計)を支払い、前年度の確定保険料を精算します。雇用保険の被保険者負担分は毎月の給与から控除されます。
尚、石綿健康被害者救済法に基づき平成19年4月1日より石綿(アスベスト)健康被害者救済のための「一般拠出金」が創設されました。拠出金率は0.005%で、労働保険確定保険料に上乗せして申告納付します。従業員負担はありません。
4.外国人に対する適用範囲
(1) 社会保険
外国人従業員についても日本人従業員と同じ取扱いになります。ただし、海外本社から日本に赴任する外国人駐在員等給与を海外本社で支給され、日本での給与支払関係がない場合は、適用を受けないケースもありますので、個々の事例について所轄の社会保険事務所に相談することをお勧めします。また、原則として70歳未満の被保険者の場合は健康保険と厚生年金保険は2つで1つの制度となっていますので、健康保険のみ加入することはできません。
海外居住者の脱退一時金の給付
短期在留の外国人が出国したときには加入期間に応じた脱退一時金が支払われます。給付の金額は、加入期間と平均標準報酬額(標準報酬月額+標準賞与額)から計算されます。脱退一時金の支払には幾つかの要件を満たさなければなりません。
(2) 雇用保険
日本国内で採用されて場合は、原則として外国人に対する雇用保険適用に関する取扱いは、日本人従業員と同様です。
(3) 労災保険
原則として、適用事業所で雇用される外国人従業員は日本国内の事業所での勤務については適用の範囲内ですが、職場が日本国内であったとしても、海外本社の事業所での業務は適用外となります。
(4) 諸外国との年金通算協定
ドイツ、英国、米国、韓国、ベルギー、フランス、カナダについては、社会保障協定が発効しており、相手国の社会保障制度の適用を受けている外国人従業員は、保険料の二重払いを避けるため日本での保険料負担を免除されます。
5.支店の日本における代表者の取扱い
(1) 社会保険
社会保険法は、適用事業所において雇用者も被雇用者と同じく被保険者になると定めています。従って、支店の日本における代表者も被保険者となります。
(2) 労働保険
労働保険は、雇用主には適用されません。外国法人日本支店の代表者は、通常その地位だけでは会社法の役員には該当しませんが、労働保険上は、原則として事業主として扱われますので、労災保険、雇用保険の加入は認められません。各労働保険事務所において個別の状況を勘案して加入資格を決定します。
6.社会保険料の今後の見通し
社会保険料に関する今後の見通しの概要は次のとおりです。各種変更見通しがでておりますので、詳細に関しましては専門家にお尋ねください。
- 厚生年金保険料
2004年10月 厚生年金保険料の段階的な引上げ開始
2017年には、年収の18.3%(労使折半)となる予定です。 - 国民年金保険料
2005年4月 国民年金保険料が現行の13,300円から毎年280円ずつ引き上げられました。
2007年4月 70歳以上の会社員の厚生年金を収入に応じ減額させます。 - 諸外国との社会保障協定については前述 のとおりですが、現在オーストラリア、オランダ、チェコとは署名済み、スペインとは交渉中、その他イタリア、アイルランド、ハンガリーとは交渉準備中です。

